――主観・評価・学習を統一的に説明する差分モデル――
人間は日々、無数の判断と意思決定を行っている。
仕事、投資、人間関係、学習、人生の選択――これらはすべて「結果」をもとに評価されているように見える。
しかし実際には、人間は結果そのものを評価しているのではない。
人間が評価しているのは、結果と自分の予測との差分である。
本稿では、主観、評価、感情、学習、意思決定を、
「予測と結果の差分」という統一的なモデルで説明する。
同じ結果でも、人によって評価は大きく変わる。
| 期待 | 結果 | 主観 |
|---|---|---|
| 100 | 80 | 失敗 |
| 50 | 80 | 成功 |
| 80 | 80 | 普通 |
結果はすべて80で同じである。
しかし評価は全く異なる。
評価 = 結果 − 期待
つまり人間は結果そのものではなく、
期待(予測)と結果の差分を評価している。
この差分は、感情や主観として現れる。
| 結果 − 期待 | 感情 |
|---|---|
| 大きくプラス | 喜び・成功 |
| 少しプラス | 満足 |
| 0 | 普通 |
| マイナス | 失望 |
| 大きくマイナス | 苦痛・怒り |
感情 = 結果 − 期待
幸福や不幸ですら、この差分で説明できる。
同じ年収でも
期待1000万円 → 実際500万円 → 不幸
期待300万円 → 実際500万円 → 幸福
現実は同じでも、主観は全く異なる。
投資の世界では「期待」は感情ではなく数学で扱われる。
期待値 = Σ(確率 × 利益)
投資家は結果ではなく期待値で意思決定を行う。
しかし最終的な満足・失望はやはり差分で決まる。
投資の主観 = 実際の利益 − 期待値
つまり投資は
予測 → 結果 → 差分 → 評価
という構造が非常に分かりやすく現れる分野である。
差分は評価で終わらない。
差分は学習に使われる。
予測
↓
行動
↓
結果
↓
差分
↓
評価
↓
学習
↓
予測更新
学習 = 差分を使って予測モデルを修正すること
これは人間だけではない。
・機械学習
・強化学習
・ベイズ推定
・脳の予測モデル
・進化
・経営
・投資
すべてこの構造を持っている。
ここまでを統合すると、人間の認識と行動は次のループになる。
内部モデル(知識・経験・基準)
↓
予測・期待
↓
行動
↓
結果(現実)
↓
差分(予測誤差)
↓
主観・感情
↓
評価
↓
学習
↓
内部モデル更新
↓
予測
人間はこのループを一生繰り返している。
この差分モデルは非常に広い分野に適用できる。
幸福 = 現実 − 期待
理解度 = 結果 − 理解しているつもり
評価 = 成果 − 上司の期待
利益 = 実績 − 計画
理論 = 予測
実験 = 結果
差分 = 新発見
環境 = 現実
遺伝子 = 予測モデル
差分 = 淘汰・進化
ほぼすべて同じ構造で説明できる。
人間は結果を評価しているのではない。
予測と結果の差分を評価している。
主観 = 現実 − 予測
感情 = 現実 − 期待
学習 = 差分による内部モデル更新
人生とは、予測と現実の差分を修正し続ける過程である。
このモデルは次の領域をつなぐ。
・クオリア(内部基準)
・主観の発生
・思考
・意思決定
・投資
・学習
・進化
・人工知能
・人生
つまり、
感覚 → 主観 → 思考 → 予測 → 行動 → 結果 → 学習
という一つの循環モデルとして、人間の認識と行動を統一的に説明できる可能性がある。
この差分モデルは、人間の主観・感情・意思決定・学習を一つの原理で説明しようとする試みである。